「現実」の現実味。 | 映画ジャンキーのつぶやき

「現実」の現実味。

【アダプテーション】

<2002年・アメリカ>
●監督/スパイク・ジョーンズ
●出演/ニコラス・ケイジ 他


監督スパイク・ジョーンズ、
脚本チャーリー・カウフマン。
あの「マルコヴィッチの穴」のコンビによる
二作目だ。

なんだか、久しぶりにすごい作品を見た思いだ。
何がすごいのか、一言でうまく言えないが、
見終わった後、すごいわ、と思えてしまうのだ。

主役は脚本家である、チャーリー・カウフマン。
そう、これ、自分をモデルにしているのだ。
「マルコヴィッチの穴」がヒットした
カウフマンは、女流作家が書いた「蘭」に
まつわるノンフィクションを脚色するという
仕事にかかっていたが、アイデアにつまり、
スランプに陥っていた。
そのうち、同居する脚本家志望の双児の弟が書いた
脚本が認められて…。

冒頭に「マルコヴィッチの穴」の実際の撮影シーン
なども折り込まれ、ニヤリとさせられる。
ニコラス・ケイジがカウフマンと双児の弟を、
一人二役で演じているのだが、さすがにうまい!
こういうウジウジとしたダメ男を演じさせたら、
彼の右に出る者はいないのでないか。

物語は、脚本に悩むカウフマンが次第に
妄想にとりつかれ、現実と架空の世界を
行ったり来たりし始める。
女流作家(演じるは名優メリル・ストリープ!)
の作品世界も映像で随時再現されていて、
このあたり、時系列も構成もかなり複雑なのだが、
混乱することなく頭に入ってくるのは、
カウフマンのテクニックのなせる技だろう。

見ているうちに、これ、最後は実はすべて
カウフマンの妄想世界だったってオチでは?
と思ったのだが、映画は終盤、
全く予想もしなかった展開を見せる。
やはりこのコンビの映画は
ひとすじ縄ではいかない。
それにしてもこの脚本家は、よほど「人間の脳」と
いうものに関心があるようだ。
最新作の「エターナル・サンシャイン」も、
恋人の記憶を消すという設定だったし。

出尽くした感のある、映画という表現手法にも、
まだまだ手がつけられていない余白があるようだ。
見終わって、満足のため息をつきながら、
そう思った。
二度、三度と繰りかえして見れば、
また新たな発見に出会えそうだ。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
アスミック
アダプテーション DTSエディション