「在日」という名の激情 | 映画ジャンキーのつぶやき

「在日」という名の激情

【夜を賭けて】

<2003年・日本>
●監督/金守珍
●出演/山本太郎、ユー・ヒョンギョン 他


「血と骨」の梁石日原作を映画化したもの。
昭和30年代初頭の大阪の朝鮮人集落が舞台。
ある日、かつて集落に住んでいた義夫(山本太郎)
が帰ってくる。義夫は仲間たちと、兵器工場跡地
を掘り起こして鉄屑集めをするが、それは警察の
取り締まりの対象となり、やがて義夫は捕まる…。

「血と骨」と比べて思ったのは、あちらが金俊平
という、ひとりの化け物のような男を中心に据え、
在日社会を個人の目で切り取ったものだとすると、
こちらが描こうとしているのは、日本の中の
在日社会そのものだということだ。
たしかに義夫という主人公がいて、彼はグループを
引っ張り、恋もするんだけど、物語は彼個人の喜び
や悲しみに沿って展開するわけではなく、
あくまで集落が背負わざるを得なかった
運命がテーマになっている。

でもこの点が逆に言えば、映画としてやや弱い。
色々な人が出てきて、それなりにドラマチックな
要素もちりばめられているのだが、それらの
描き方が中途半端で、誰に感情移入して見れば
いいのかが、いまいちわからないのだ。
もう少し、焦点をどこかに絞った方が、
スーッと見る者の心に届く映画になったのでは
ないだろうか。

「血と骨」はひたすらに重く、
救いのないままのラストを迎えたが、
こちらは悲劇に見舞われながらも、
そこから這い上がるたくましさを見せる。
ラストに象徴される、このエネルギー、
躍動感こそが映画がいちばん描きたかった
ものなのかもしれない。
在日社会をさまざまな角度から知る意味でも、
「血と骨」と見比べると、またおもしろいかも
しれない。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)

※アマゾンではこの作品扱っていないようなので、
 かわりに「血と骨」を。
 
タイトル: 血と骨 通常版