生まれるのは天使か、悪魔か。 | 映画ジャンキーのつぶやき

生まれるのは天使か、悪魔か。

【ローズマリーの赤ちゃん】

<1968年・アメリカ>
●監督/ロマン・ポランスキー
●出演/ミア・ファロー、ジョン・カサベテス 他


「戦場のピアニスト」のポランスキ-監督による、
カルトホラーの傑作。

ニューヨークのアパートに若い夫婦が引っ越して
くる。まもなく妻のローズマリーは妊娠。何かと
かまってくる隣家の老夫婦に不信を抱いた彼女は、
精神的に不安定になり、やがて自分が身ごもった
のは悪魔の子なのではとの思いを抱くようになる…

明るかったローズマリーが次第におびえ、殻に
閉じこもるようになっていく様子が、非常に
丁寧な描写で描かれていく。
果たして彼女がとらわれているのは、ただの
妄想なのか、それとも真実なのか。
ローズマリーの不安は、映画を見ている者の
ものでもある。観客はローズマリーの心の動きと
ともに、現実と妄想の間を行ったり来たりする。
ショッキングな映像や派手な音で驚かせたりと
いった演出など、ほとんどないにも関わらず、
重く粘りつくような空気は、ドンドンこちらに
迫り、息がつまりそうになる。
計算され尽くしたカメラワークにより
この恐怖を生み出すポランスキーの腕は、
まさに職人芸というほかはない。

ローズマリーを演じる
ミア・ファローの魅了も大きい。
ちょっとヘップバーンにも似た、
小柄で可憐な容姿。
不安と狂気を、リアリティとともに伝える演技力。
彼女の存在感なくして、映画の成功はなかったかも
しれない。
映画は驚きのラストを迎えるが、果たしてそれは
ほんとうにその通りなのか。
どう解釈するかは、
見た者それぞれの胸の内にある。

当時のアメリカにあった悪魔崇拝の背景など、
日本人の感覚として、ややわかりにくい要素も
あるが、それらを差し引いても、この肌で感じる
怖さは一級品と言えるだろう。
ひとつ注意を。
今、実際に妊娠されている方は見ない方が賢明。
マタニティブルーの元になるおそれあり。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
 
タイトル: ローズマリーの赤ちゃん