映画ジャンキーのつぶやき
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お知らせ。

本ブログ【映画ジャンキーのつぶやき】
を見てくださっている方、
いつもありがとうございます。

これまで、このブログとは別に書評の
ブログをやっていたのですが。
本ブログと合わせて一本化することにしました。
タイトルを変更し、本と映画両方の
感想を記していくことにします。
スタンスはこれまでと何ら変わりませんので、
これからもよろしくお願いします。
お手数をおかけしますが、
これからは以下にて、引き続きご訪問
いただければ幸いです。

【活字 & 映画ジャンキーのおたけび!】
http://katsuzi-junkie.ameblo.jp/


戦後の陰、人の闇。

【飢餓海峡】

<1965年・日本>
●監督/内田吐夢
●出演/三國連太郎、判淳三郎、左幸子 他


水上勉の原作を巨匠、内田吐夢監督が映像化。
邦画の歴代人気ベスト10などでは、必ずと
いっていいほど上位に入ってくる名作だ。
強烈なタイトルは、以前から知ってはいたが、
ようやく見ることができた。
うわさに違わぬ圧倒的な完成度。
激動の戦後を背景にうごめく、人の愛とエゴ。
3時間があっという間だった。

1946年、青函連絡船が嵐で沈没し、
多数の死者が出る。
しかし収容された遺体の数を、乗客名簿と
照らし合わせると、なぜか2人多い。
警察は、そこに混乱に乗じた別の殺人事件が
絡んでいると見て、捜査に乗り出す…
この冒頭のシークエンスが抜群にいい!
原作の力もあるだろうが、混沌とした戦後の
空気が映像全体を覆っていて、
いきなりその世界に引きずり込まれるような
感覚を覚える。

刑事役の判淳三郎は、飄々とした中に、
確固たる意思の強さをにじませる。
犯人役は三國連太郎。最近はもっぱら
「釣りバカ日誌」のスーさんのイメージが
強いが、若かりしその姿の渋いこと!
大阪弁を使う大男を存在感たっぷりに見せる。
そして忘れてはならないのが、10年に渡って
犯人を恋慕う遊女を演じる、左幸子。
彼女の映画はほとんど見たことなかったが、
悲しい女の性を、独特の語り口と変幻の表情で
見事に演じ切っている。
他に高倉健も刑事役で出ているのだが、後年の
彼の印象からすると、驚くほど影がない。

映画は函館、東京、そして舞鶴と
スケール大きく展開する。
この物語は、犯人を追う刑事と、逃げる犯人の
ミステリーではあるのだが、
映画のテーマはそこではなく、戦後という
時代が持つ陰と、そこを生きる人間の闇に
あるのだろう。そして、その時代ゆえに
背負わざるを得なかった、罪と罰。

映画のラストシーン、思わず「あっ」と声が出た。
この衝撃的なラストが、本作をさらなる
名作に仕上げているのはまちがいない。
寒々と、どこまでも広がりゆく海原が
頭から消えない。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
東映
飢餓海峡



「現実」の現実味。

【アダプテーション】

<2002年・アメリカ>
●監督/スパイク・ジョーンズ
●出演/ニコラス・ケイジ 他


監督スパイク・ジョーンズ、
脚本チャーリー・カウフマン。
あの「マルコヴィッチの穴」のコンビによる
二作目だ。

なんだか、久しぶりにすごい作品を見た思いだ。
何がすごいのか、一言でうまく言えないが、
見終わった後、すごいわ、と思えてしまうのだ。

主役は脚本家である、チャーリー・カウフマン。
そう、これ、自分をモデルにしているのだ。
「マルコヴィッチの穴」がヒットした
カウフマンは、女流作家が書いた「蘭」に
まつわるノンフィクションを脚色するという
仕事にかかっていたが、アイデアにつまり、
スランプに陥っていた。
そのうち、同居する脚本家志望の双児の弟が書いた
脚本が認められて…。

冒頭に「マルコヴィッチの穴」の実際の撮影シーン
なども折り込まれ、ニヤリとさせられる。
ニコラス・ケイジがカウフマンと双児の弟を、
一人二役で演じているのだが、さすがにうまい!
こういうウジウジとしたダメ男を演じさせたら、
彼の右に出る者はいないのでないか。

物語は、脚本に悩むカウフマンが次第に
妄想にとりつかれ、現実と架空の世界を
行ったり来たりし始める。
女流作家(演じるは名優メリル・ストリープ!)
の作品世界も映像で随時再現されていて、
このあたり、時系列も構成もかなり複雑なのだが、
混乱することなく頭に入ってくるのは、
カウフマンのテクニックのなせる技だろう。

見ているうちに、これ、最後は実はすべて
カウフマンの妄想世界だったってオチでは?
と思ったのだが、映画は終盤、
全く予想もしなかった展開を見せる。
やはりこのコンビの映画は
ひとすじ縄ではいかない。
それにしてもこの脚本家は、よほど「人間の脳」と
いうものに関心があるようだ。
最新作の「エターナル・サンシャイン」も、
恋人の記憶を消すという設定だったし。

出尽くした感のある、映画という表現手法にも、
まだまだ手がつけられていない余白があるようだ。
見終わって、満足のため息をつきながら、
そう思った。
二度、三度と繰りかえして見れば、
また新たな発見に出会えそうだ。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
アスミック
アダプテーション DTSエディション

引っぱり、のさじ加減。

【シークレット・ウィンドウ】

<2004年・アメリカ>
●監督/デビッド・コープ
●出演/ジョニー・デップ、ジョン・タトゥーロ 他


ジョニーデップの魅力たっぷりのサスペンス。

妻と別居し、山奥の山荘で暮らすミステリー作家の
モートのもとを、ある日男が訪ねてくる。
男は「俺の小説を盗作しただろ」と覚えのない
いいがかりをつけてくるが、彼の持ってきた
原稿を読んだモートは、それがかつて自分が書いた
小説とそっくりなことに驚く…

途中でオチが読めてしまうのは、ミステリーと
してはやや弱いが、それでも最後までおもしろく
見れてしまうのは、はやり
ジョデー・デップの演技によるところが大きい。
ほとんど一人芝居といってもいいぐらい、
出ずっぱりのジョニーだが、
どこか投げやりの日々を送る、
くたびれた作家像をノビノビと演じている。
しかしこういう小汚い役をやらせると、
ほんとによくハマる。
すっかり売れっ子になった最近では、大作への出演
も相次いでいる彼だが、やはり本来の持ち味は
こちらなのではないだろうか。
本人も自分のフィールドに帰ってきたように、
喜々として演じているように見える。

ひとつ意外だったのは、オチを最後の最後まで
引っ張るのではなく、その一歩手前で
明かしていることだ。
そしてエピローグの部分で、事の真相に対する
より深い解釈を描いている。
このやり方は、うまいなあと感心した。
ジョニデファンはもちろん、それ以外の人でも
先入観なしに見れば、十分楽しめる作品だろう。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
シークレット・ウインドウ コレクターズ・エディション

気にしない、気にしない。

【ザ・コア】

<2003年・アメリカ>
●監督/ジョン・アミエル
●出演/アーロン・エッカート、ヒラリー・スワンク 他


一言でいえば、地底版「アルマゲドン」。

ある日、地球内部の核(コア)が突然、
その回転を停止する。このままでは
人類は1年以内に滅亡してしまう。
科学者や宇宙飛行士など、選ばれし6人が、
開発された地底探査機に乗り込み、
核へと潜っていく…。

この手の映画で、細かいことを指摘するのは
やぼというものだ。
何千度もの高温の地底世界へ潜る探査機が、
いとも簡単につくれたのはなぜか?
地中に何もない空間があるのは本当なのか?
いくら防護服を着ているとはいえ、探査機の外に
出て作業などできるものなのか?
行きに比べて、帰りがえらい楽に見えるのはなぜ?
などなど、そんなことは
決して気にしてはいけない。(笑)

しかしそのあたりには目をつぶる代わりに、
人間ドラマ的な部分では感動させてほしいのだが、
どうも中途半端な印象だ。
お約束の通り、ひとり、またひとりと死んで
いくのだが、その死に方にいまひとつ工夫がない。
またキャラの描き分けが不十分なので、
感情移入もそれほどできない。
驚いたのは、ただひとりの女性乗組員が
どこかで見た顔だなあと思っていたら、
なんとこれが、ヒラリー・スワンク!
今やアカデミーに2度も輝く名女優じゃないか。
彼女、お高くとまっているようで、
意外とおやすいのかも。

後半には、コアが停止した真の理由が
明らかになり、そこには現社会への
メッセージが込められていたり
するのだが、これもいかにも付け足しと
いった感が否めない。

なんだかボロカスに書いているようだが、
実はそれなりに、おもしろく見れた。
だって、こんな風につっこみながら見るのも、
映画のひとつの楽しみ方ではないか。
まあ劇場で見たとしたら、そう余裕
ぶっこいてもいられないかもしれないが。(笑)


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)


ジェネオン エンタテインメント

ザ・コア



カミカゼに吹かれる夜

【THE WINDS OF GOD ~零のかなたへ~】

●作・演出・主演/今井雅之
●新宿・紀伊國屋サザンシアター


今回は映画ではなく舞台作品。
数年前にテレビでの公演録画を見て号泣して以来、
なんとか生で見たいと思っていたのが、今回4年
ぶりに再演されるのを聞き、即チケットをゲット!
念願の観劇となった次第だ。

2005年夏、東京。
売れない漫才コンビの、アニキとキンタは
交通事故に巻き込まれる。
意識が戻ると、そこは1945年8月、
大平洋戦争末期の日本海軍。
なんと彼らは、神風特攻隊員としての前世の
姿に生まれ変わっていたのだ。
自分たちに突き付けられた運命を呪いながらも、
やがて彼らは特攻隊員としての自我に目覚めて
いく。そしてついに、零戦での出撃の日を迎える…

この設定が、やはり抜群にいい!
漫才師という役柄だけに、前半はネタやアドリブも
満載で、場内は終始笑いにつつまれているのだが、
それが後半の激しく悲しい展開を一層際立たせる。
何でもギャグにしてしまう軽いコンビが、
特攻仲間の生きざま、そして死にざまに出会う
ことで変わってゆき、葛藤を乗り越えていく。
そこにあるのは、漫才師ではなく、ひとりの人間、
そしてひとりの日本人としての決意なのだ。
後半は何度も登場人物に同化し、
込み上げるものを抑えられなかった。

2時間を超える芝居なのだが、
全くダレることなく舞台に集中できるのは、
よく練られた脚本と、
役者たちの熱演のたまものだろう。
主演の今井雅之はもちろん、コンビ役の松本匠も
いい味を出している。その他の特攻隊員も、
それぞれにキャラが立っていて、
みんな愛しいのだ。

公演終了後の今井のメッセージも心に染みた。
平和ボケの時代はもう過ぎ去ったと言える、
今だからこそ見る価値がある芝居だと思う。
重くも、どこかすがすがしい充実感とともに、
劇場を後にした。

公演は今後、9月末までかけて
全国をまわるようなので、
興味をもたれた方は、ぜひ足をお運びを。
公演内容、スケジュールに関しては下記サイトで。

http://www.ceres.dti.ne.jp/~elle-co/


■個人的ハマリ度 ★★★★★(★5つが最高)
今井 雅之
THE WINDS OF GOD―零のかなたへ

インクレディブルのおとっつぁん

【Mr.インクレディブル】

<2004年・アメリカ>
●監督/ブラッド・バード
●出演(声)/クレイグ・T・ネルソン、ホリー・ハンター 他


「ファインディング・ニモ」に続く、
ピクサーによるCGアニメ。

人気ナンバーワンのスーパーヒーロー、
Mr.インクレディブルは、そのあまりの破壊力が
一般市民にも害を与えてしまうことから、
政府から活動禁止を言い渡される。
それから15年、インクレディブルは保険会社で
働く日々だったが…。

ピクサ-作品はなんだかんだと言いながら、
全部見てるが、最近はちょっと
マンネリ感もなくはなかった。
でも本作は、これまでの
作品とはひと味違っていた。
まず何より「人間」が主人公だということ。
これが大きい。
まあスーパーヒーローだから、
当然普通の人間ではないのだけど、
それでも普通の人間と同じような悩みを
抱えていて、かなり共感できてしまう。
イヤミな上司に笑顔をふりまき
仕事を遂行する姿は、「Mr.インクレディブル」
というよりも、居酒屋でくだをまいてる、
「インクレディブルのおとっつぁん」と呼ぶ方が
お似合いなほど
サラリーマンの悲哀を漂わせているのだ。
これまでの、どちらかといえば子供の目線中心
だったピクサーにとっては、
この主人公像は、かなりの冒険だったに違いない。
加えて敵役が、かつてのMr.インクレディブルの
ファンの男の子だったという、妙にシニカルな
設定も、ひねりがきいていておもしろい。

CGのデキは、今さらいうまでもなく素晴らしい。
もうこれ以上やることはあるの?という
レベルまできている。
あとピクサーの映画でいつも感心するのは、
圧倒的なテンポの良さだ。
この映画も115分とアニメとしてはかなり
長い上映時間なのだが、
全くダレることなく見ていられる。
おそらく脚本や絵コンテの段階で、
相当の試行錯誤がくり返されているのだろう。

映画のテーマは、これまでと同じく
「家族愛」なのだが、キャラの設定や
クライマックスへの展開などを
アレンジすることで、これほどガラリと印象は
変わってしまうものなのだ。
やはり今後も、ピクサーからは目が離せない。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
Mr.インクレディブル

定食、プラス一品

【ボーン・スプレマシー】

<2004年・アメリカ>
●監督/ポール・グリーングラス
●出演/マット・デイモン、カール・アーバン 他


前作「ボーン・アイデンティティー」の続編。
インドで恋人と暮らしていたジェイソン・ボーンは
陰謀に巻き込まれ、恋人を失う。
ヨーロッパ、ロシアを舞台に、ボーンと組織との
対決が繰り広げられる…。

「ハリウッド」「スパイ映画」。
このキーワードだけで、内容はなんとなく想像
できてしまうところがある。
追いつ追われつのアクション、銃撃戦、
あるいはち密な頭脳戦、内部の抗争。
この映画もお約束にもれず、これらのメニューは
含まれている。いわば定食メニュー。

しかし、このシリーズをただの定食映画に
終わらせていないのが、「記憶喪失のCIA暗殺者」
という主人公の設定だ。
このプラスαの部分が、映画の影となって、
物語に深みを与えている。
ボーンは過去に自らが関わった作戦の失敗が
トラウマとなっており、度々そのシーンが
フラッシュバックする。
この映画はスパイ映画であるとともに、
主人公が過去を取り戻すための、自分探しの
物語でもあるのだ。

ヨーロッパが舞台のためか、
どこか重々しい空気が、
作品の空気とよくマッチしている。
カーアクションシーンなどもかなりの迫力。
しかし前作に比べると、少々欲張りすぎの感も
否めない。殺し屋をはじめ、CIA諜報員その他、
ボーンを巡り様々な人物の思惑が入り乱れ、
誰が、何のために、どう動いているのかが、
わかりにくいのだ。
特に前作を未見の人は、
かなり混乱するのではないだろうか。
これから見ようという人は、ぜひ前作を見てから
本作に望むことをおすすめする。

このシリーズは全3部作の予定だそうだ。
ボーンの正体がすべて明かされるであろう、
次回の完結編に期待したい。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
 
タイトル: ボーン・スプレマシー

「在日」という名の激情

【夜を賭けて】

<2003年・日本>
●監督/金守珍
●出演/山本太郎、ユー・ヒョンギョン 他


「血と骨」の梁石日原作を映画化したもの。
昭和30年代初頭の大阪の朝鮮人集落が舞台。
ある日、かつて集落に住んでいた義夫(山本太郎)
が帰ってくる。義夫は仲間たちと、兵器工場跡地
を掘り起こして鉄屑集めをするが、それは警察の
取り締まりの対象となり、やがて義夫は捕まる…。

「血と骨」と比べて思ったのは、あちらが金俊平
という、ひとりの化け物のような男を中心に据え、
在日社会を個人の目で切り取ったものだとすると、
こちらが描こうとしているのは、日本の中の
在日社会そのものだということだ。
たしかに義夫という主人公がいて、彼はグループを
引っ張り、恋もするんだけど、物語は彼個人の喜び
や悲しみに沿って展開するわけではなく、
あくまで集落が背負わざるを得なかった
運命がテーマになっている。

でもこの点が逆に言えば、映画としてやや弱い。
色々な人が出てきて、それなりにドラマチックな
要素もちりばめられているのだが、それらの
描き方が中途半端で、誰に感情移入して見れば
いいのかが、いまいちわからないのだ。
もう少し、焦点をどこかに絞った方が、
スーッと見る者の心に届く映画になったのでは
ないだろうか。

「血と骨」はひたすらに重く、
救いのないままのラストを迎えたが、
こちらは悲劇に見舞われながらも、
そこから這い上がるたくましさを見せる。
ラストに象徴される、このエネルギー、
躍動感こそが映画がいちばん描きたかった
ものなのかもしれない。
在日社会をさまざまな角度から知る意味でも、
「血と骨」と見比べると、またおもしろいかも
しれない。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)

※アマゾンではこの作品扱っていないようなので、
 かわりに「血と骨」を。
 
タイトル: 血と骨 通常版

生まれるのは天使か、悪魔か。

【ローズマリーの赤ちゃん】

<1968年・アメリカ>
●監督/ロマン・ポランスキー
●出演/ミア・ファロー、ジョン・カサベテス 他


「戦場のピアニスト」のポランスキ-監督による、
カルトホラーの傑作。

ニューヨークのアパートに若い夫婦が引っ越して
くる。まもなく妻のローズマリーは妊娠。何かと
かまってくる隣家の老夫婦に不信を抱いた彼女は、
精神的に不安定になり、やがて自分が身ごもった
のは悪魔の子なのではとの思いを抱くようになる…

明るかったローズマリーが次第におびえ、殻に
閉じこもるようになっていく様子が、非常に
丁寧な描写で描かれていく。
果たして彼女がとらわれているのは、ただの
妄想なのか、それとも真実なのか。
ローズマリーの不安は、映画を見ている者の
ものでもある。観客はローズマリーの心の動きと
ともに、現実と妄想の間を行ったり来たりする。
ショッキングな映像や派手な音で驚かせたりと
いった演出など、ほとんどないにも関わらず、
重く粘りつくような空気は、ドンドンこちらに
迫り、息がつまりそうになる。
計算され尽くしたカメラワークにより
この恐怖を生み出すポランスキーの腕は、
まさに職人芸というほかはない。

ローズマリーを演じる
ミア・ファローの魅了も大きい。
ちょっとヘップバーンにも似た、
小柄で可憐な容姿。
不安と狂気を、リアリティとともに伝える演技力。
彼女の存在感なくして、映画の成功はなかったかも
しれない。
映画は驚きのラストを迎えるが、果たしてそれは
ほんとうにその通りなのか。
どう解釈するかは、
見た者それぞれの胸の内にある。

当時のアメリカにあった悪魔崇拝の背景など、
日本人の感覚として、ややわかりにくい要素も
あるが、それらを差し引いても、この肌で感じる
怖さは一級品と言えるだろう。
ひとつ注意を。
今、実際に妊娠されている方は見ない方が賢明。
マタニティブルーの元になるおそれあり。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
 
タイトル: ローズマリーの赤ちゃん